クィア・ミュージックの情報アーカイブ


Queer Music Review -Live Review-

渋谷 de 一軒家 vol.21

2011年5月5日 at 渋谷 gee-ge

Live:Taja、柏本 圭二郎(現:keiZiro)
DJ:Toby, T-AK

このライブ観覧記は、当サイト運営者が SNS の mixi で Web 日記として公開していたテキストを、加筆して再録したものです。テキストの性質上、文体も内容も、かなり軽めです。

渋谷 de 一軒家 vol.21

こどもの日の2011年5月5日には、渋谷 gee-ge (ジージ) にておこなわれた、『渋谷 de 一軒家 vol.21』に、足を運んでまいりました。

お目当ては、柏本 圭二郎(現:keiZiro)さんのライブ。

圭二郎さんのセカンド・シングルである壮大なバラード曲「世界中のすべてのマリア」を手がけられたデュオ・ユニット、Taja さんの主催によるイベントです。

※「世界中のすべてのマリア」のレビューは、こちら。>> Here

圭二郎さんのマネージャーさん(当時)とは、2005年からの知り合いではあるのですが、圭二郎さんご本人とは、ウェブ上でやりとりしたり、電話でお話をさせてもらったりしたことはあったのですが、直接お会いしたのは、実は、この日が初めてだったのでありました。

いやー、私には無条件で楽しかったです。

まずは、Taja さんのライブからスタート。Taja さんは、圭二郎さんの「世界中のすべてのマリア」の他にも、近年のガンダム作品の主題歌なども担当なさっているそうです。

今回は、ボーカルの菜穂さんが、マイクのワイヤーの長さが許す限界までフロアーに降りてきて、お客さんのあいだに立って歌われるという場面があったのですが、ワイヤーの長さが限界を迎えたその地点が、

ちょうど藤嶋の座っていたテーブルの真横。

そして菜穂さんは、たまたまそこにいた藤嶋のハゲ頭を、グーリ、グーリと撫で回しながら熱唱。

そして何事もなかったかのように、ステージに戻っていかれました。

藤嶋、唖然。

同席させていただいていた、ゲイ雑誌『バディ』のライターの某氏、バカウケ。


そして、圭二郎さんのライブ。

今回は、ラストの1曲を除く全曲がクラブ仕様。壮大なバラードのセカンド・シングル「世界中のすべてのマリア」も、それから C-C-B の関口誠人さんが手がけられたハードボイルド・タッチのサード・シングル「キスとチューインガム」も、80's のテクノやディスコの要素がちりばめられつつも現代的な意匠のクラブ・ミュージックに生まれ変わっていました。

私は圭二郎さんとは世代が近いので(たしか2、3歳ぐらいの差だったはず)、こうした80's 的な要素は、私にも大好物でした。

柏本 圭二郎1

今回の圭二郎さんのサポート・メンバーは、DJ Toby さんと渡部高士さん、小澤元 (hajirock) さん、そしてコーラスの ViVi さん。

Toby さんは MC のあいだもずっと音を出し続けていらして、圭二郎さんの MC 中の面白いフレーズを、その場ですぐにサンプリング、何度も何度も執拗にリピートなさるのが、かなり笑えました。


あと、これはたぶん、この日がこどもの日だったからだと思うんだけれども、小学校低学年くらい? のお子さんたちが、2~3人ほど、スタッフとしてカウンターの中に入っていたり、お給仕でお料理を運んでいたりしました。

ドリンクを頼もうとしてカウンターに出向くと、小学生くらいの男の子が「ご注文は?」と聞いてくる。そこで私がモルツ生を頼むと、なんとその男の子自身が、ビールをサーブしてくれるの。しかも泡の比率が巧い!(笑) いったいどこでそのワザを身につけたんだい? と聞きたくなるくらいでした。聞かなかったけど。

で、ステージのほうでは、圭二郎さんが「ケツの穴は入口ではなくて出口です」みたいな、お下劣な MC をしているわけですよ(笑)。そのすぐ前を、小学生くらいの女の子が、チョコマカとした足取りで、お客さんのところにお料理を運んでいったり、伝令役を務めていたりするという(笑)。

ゲイゲイしさ全開でありながら、新宿二丁目のクラブ・イベントではまずあり得ないし観られないであろう、そんな類のシュールな場面が、多々ありました(笑)。

柏本 圭二郎2

それから、この日のセットリストでは、マドンナの「Papa Don't Preach」のカバーも歌われたんだけど(そういやマドンナはまさに80's の象徴ですね)、これがもう、最高に笑えました。

原詞ではなく日本語詞で歌われたんだけど、そのタイトルは、「パパやめて」(笑)。

タイトルが連呼されるサビの部分では、当然、「パパやめて♪」と歌われるわけです。

原詞の内容は、未婚のまま妊娠してしまった10代の女の子が、結婚と出産への理解を父親に求めるというものなんだけど、「パパやめて」の内容は、そのタイトルがイメージさせるとおり、近親相姦(笑)。

なんだか『パタリロ!』第16巻に出てきた「ショートポルノごっこ」を思い出させる内容でした。


もちろん、笑いだけではなく、この日のライブでは、真摯なメッセージも、ちゃんと届けられました。

圭二郎さんの今回のセット・リスト、最後の曲は、圭二郎さんも参加をなさっている、UFF の「Unite for Friends」

UFF は、東日本大震災の被災者のみなさんを支援するための、チャリティー・プロジェクトです。その結成の経緯は、UFF の公式ブログに詳しく記されていますが、ここでもそれを引用させてもらいます。

「東北関東大震災発生から二日後の2011年3月13日、Blue Finger Records の呼びかけに応えた、平岡恵子、堀田義樹 (imaginations)、YongAe (東京エスムジカ)、戸田和雅子、Michiko (baby tears)、田中菜穂 (Taja)、カオリ (Hi-Endorphin)ら7人のシンガーと、永田”zelly”健志、名越由貴夫、Tomzuin h、石村順、伊藤勇気、狩野佑次 (Taja)、森本ユウジ (Hi-Endorphin)ら7人のミュージシャン、仙台市若林区出身の映像クリエイター沼田秀樹によって一夜にして UFF を結成。数日の後この動きに賛同した、漫画家の佐俣ユミと、グラフィックデザイナーの阪谷圭一、名古屋から、ViVi、柏本圭二郎の2人のシンガーが参加し、各自の自宅環境で極力電力消費を控えて録音するというルールと、不安と孤独を抱える人と結束するという強い信念のもとにオリジナル曲『Unite for Friends』を制作、即発表。 」

そして今回の『渋谷 de 一軒家 vol.21』では、UFF に参加されたシンガーのみなさんのうち、Taja の菜穂さん、圭二郎さん、ViVi さん、そして baby tears の Michiko さんの4人のかたがたが集結なさって、「Unite for Friends」が披露されました。圭二郎さんと Michiko さんは、この日が初対面だったそうです。

(左→右)田中菜穂(Taja)、柏本 圭二郎、Michiko(baby tears)、ViVi

こうしたメッセージ性の強いバラード曲を、圭二郎さんが歌われるのを聴くたびに、柏本 圭二郎というアーティストの本質は、こうしたバラード曲の中に顔を出している、「優しさ」にこそあるのだなあ、と、つくづく思います。

でも、圭二郎さんは本当はきっと、とってもシャイなかたで。

だからこそ普段は、テンションの高いオネエ系のキャラクターで通していらっしゃる。

……そんな印象を、私は受けるのですよね。

もちろん、ハッキリした根拠があっての話ではないのだけれども。

今回のライブにもあったような、お下劣ネタ全開の MC というのは、圭二郎さんが本当はシャイなかたであるがゆえの、照れ隠しとしての露悪・偽悪なのではないか、という感触が、私にはあるのです。

その意味では、柏本 圭二郎さんと、とんちピクルスさんのおふたりには、ちょっと共通の匂いがあるかもしれない。

そうしたシャイネスゆえの露悪・偽悪という側面があるからこそ、私にはなおのこと、「Unite for Friends」や「世界中のすべてのマリア」といった曲によって示される圭二郎さんの「優しさ」が、圭二郎さんの「素顔」として、際立って美しく感じられるのです。

さて、この日の圭二郎さんのライブの模様は、現在では USTREAM および YouTube で全篇が公開されています。「Unite for Friends」や、クラブ・ミュージック仕様の「世界中のすべてのマリア」「キスとチューインガム」、さらには MC 場面での DJ Toby さんの暴走っぷりなど(笑)、観どころ、聴きどころが満載の60分です。

Text and Photo by Takaki Fujishima



inserted by FC2 system