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Queer Musicians -Overseas-

メアリー・ランバート

Mary Lambert

ジャンル:ポップ

Letters Don't Talk

関連リンク


バイオグラフィー

掲載日:2013年10月24日、最終更新日:2013年10月24日

2013年の夏に、全米シングル・チャートで最高11位を記録した、白人ヒップホップ・デュオのマックルモア&ライアン・ルイスによるゲイ・ライツ・アンセム「Same Love」にフィーチャーされ、一躍脚光を浴びた、オープンリー・レズビアンのスポークン・ワード・アーティスト、兼、シンガー・ソングライター。ワシントン州シアトルに拠点を置いている。

1989年5月3日、メアリー・ランバートはワシントン州エバレットに生まれた。幼少時に性的虐待を受けていた彼女にとって、音楽とは、感情の捌け口であったという[*1]。6歳のころから独学でピアノを弾き始め[*2]、13歳で彼女はライブ活動を開始している[*1]。

現在は福音派のクリスチャンであるメアリーは、子どものころにはペンテコステ派の教会に、一家で奉仕していた。しかし、メアリーが6歳のときに、シンガー・ソングライターであった母親がレズビアンであることをカミング・アウトしたことで、一家は教会から追放されてしまう[*1]。教会は地域の経済にも大きな影響力を及ぼしており、そこから閉め出されたメアリーの一家は、窮乏を強いられることになった。こうした体験もあってか、自身の同性愛と信仰を、どのように調和させていくかが、現在でもメアリーの重要なテーマとなっている[*2][*3]。

インタビューによると、メアリーは17歳で、母親と同じく自分もレズビアンであることを自覚したという。

「たとえ母親が同性愛者であっても、私もそうかもしれないだなんて考えつきもしなかった。魅かれるのはいつだって女の人だったくせにね。可笑しいわよね」[*1]

高校卒業後はシアトルのコーニッシュ芸術大学に進学。そこで最初のガールフレンドとの別離を経験した彼女は、その悲しみから逃れようと、さらに音楽に集中するようになった。そして2012年8月には、自主制作の EP 『Letters Don't Talk』をデジタル・リリースした。収録曲の「I Know Girls (Bodylove)」は、ボディイメージや自傷、虐待などをテーマとしたスポークン・ワード・スタイルの作品で、この曲についてメアリーは次のように述べている。

「『Bodylove』を書いたのは、二十歳のころ。当時の私は向こう見ずで、破滅的で、そういうことばかりを考えていたのよ」[*2]

"I Know Girls (Bodylove)"
(2012)

さらに彼女は、シアトルを拠点としている白人ヒップホップ・デュオ、マックルモア&ライアン・ルイスによるゲイ・ライツ・アンセム「Same Love」にフィーチャーされた。この曲は、ワシントン州での同性婚の合法化を求める住民投票のキャンペーンが展開されていた時期にレコーディングされたもので、マックルモアのゲイの叔父に捧げられている。サビの部分はメアリーが2時間ほどで書き上げたもので、メアリーと生活を共にしているガールフレンドのレイチェルについて歌われている[*2]。この「Same Love」は、マックルモア&ライアン・ルイスのデビュー・アルバム『The Heist』からの4曲めのシングルとしてカットされ、翌2013年2月に全米のシングル・チャートにランク・イン。8月には最高11位まで上昇するヒット曲となった。そのジャケットには、マックルモアのゲイの叔父と、彼のパートナーの写真が用いられている。

"Same Love"
(Macklemore & Ryan Lewis feat. Mary Lambert)

(2013)

マックルモア&ライアン・ルイスとメアリーの3人は、この「Same Love」のヒットによって、同性婚の合法化の動きが、アメリカの他州にも広がっていくことを期待していたが、その反響の大きさは彼らの予想を超え、アメリカ国内だけには留まらない、世界的なものとなった。全英のシングル・チャートでは、「Same Love」は最高6位を記録。さらにオーストラリアとニュージーランドでは、シングル・チャートの1位を獲得。特にオーストラリアでは、ダブルプラチナを記録する大ヒット曲となった。こうした反響の大きさについて、メアリーはインタビューで次のように述べている。

「(同性婚の合法化に向けた動きが)世界中に波及していくなんて、私たちは予期してなかったと思う」[*1]

「これはゲイ・ライツにとって、国際的にも重要な局面なんだってことを、私はよくわかっていなかった。この曲が大ヒットしたことで、私にもそれが自覚できた」[*1]

「50歳の女性から、e メールが来たの。『私はずっとゲイ・コミュニティには抵抗がありましたが、娘がこの曲を教えてくれました。本当に、目が覚めるような思いでした』って。そういうeメールが、この情熱を燃え立たせてくれるのよ。私は正しいおこないをしているんだって感じられて、とても充実しているわ」[*1]

2013年7月には、「Same Love」から派生したスピンオフ作品ともいうべき、メアリーのソロ・シングル「She Keeps Me Warm」がデジタル・リリースされた。

"She Keeps Me Warm"
(2013)

8月25日には、ニューヨークのバークレイズ・センターを会場に、2013年度の MTV 音楽賞の授賞式がおこなわれ、「Same Love」が最優秀メッセージ・ビデオ賞を受賞した。メアリーも、マックルモア&ライアン・ルイスの二人と共にステージに登場。この曲のライブ・パフォーマンスを披露した。


*1 Lesbian Macklemore Collaborator on 'Same Love' is Poised for the Big Time (SheWired, 2013.05.09)
*2 Mary Lambert, Singer Featured On Macklemore's 'Same Love,' Talks Songwriting, Lesbians, Vulnerability (Huffpost Gay Voice, 2013.05.18)
*3 gay christians are totally okay dog (marylambertsings.com, 2012.12.29)

(文中敬称略)



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